529 名利の場

福田家が新しく結びついた権力者が深沢家と井野家だとは思いもよらず、加藤恋は少し驚いた。遠い親戚でさえも門を叩いてくるなんて、福田家は今回本当に運が向いてきたようだ。うまく掴んでくれることを願うばかりだ。

「でも、あの井野社長は...井野家も数千億規模の上場企業グループの会長なのに、なぜ突然福田家の人々と一緒にいて、さらに福田桐子を堂々と表に出すんだろう?」福田隼人の声は少し震えていた。彼の心の中に良くない考えが浮かび上がってきた。

しかし群衆の中の福田桐子は、人々の視線を浴びながら、心の中で非常に喜んでいた。これが万人の注目を集める喜びなのだ!

傍らの井野忠は上場企業グループの会長であるだけでなく、深井会長の友人でもあり、その場にいるビジネスマンたちは皆、彼の顔を立てなければならず、次々と取り入ろうとしていた。

井野忠が福田桐子を紹介する際には、姪や福田家の未来のリーダーといった言葉を使い、さらに彼と深井須澄が福田家に投資したことを自ら明かし、その場にいた人々は一気に福田桐子に対しても敬意を示すようになった。

以前は福田桐子に冷たい態度を取っていた人々までもが、今では彼女に取り入ろうと協力を申し出し、謙虚な表情で名刺を差し出し、お世辞を並べ立てるようになった。

これによって福田桐子の虚栄心は大いに満たされた。これこそが上流社会、権力者だけが得られる待遇だ。そう考えると、福田桐子は思わず顔を上げ、心の中で興奮を抑えきれなかった。

これまで福田家は底辺に落ちていて、ほとんど誰からも相手にされない状況だったが、深沢家と井野家という大きな後ろ盾を得てからは、瞬く間に各業界が付き合いたがる相手となった。

いわゆるビジネス界とは、結局のところ名利の場に過ぎず、そこにいる人々は皆現実的なのだ。

福田桐子は傍らの加藤恋を見た。これが芸能人になる感覚なのか、加藤恋がこれほど楽しんでいるのも納得だ。しかし今や彼女は加藤恋や福田隼人よりもさらに高い地位にあり、より強力な後ろ盾を得ただけでなく、福田隼人と福田元に取って代わって福田家の新しい総監になった。福田のお婆様でさえ彼女に対して恭しく接しなければならず、家族の中で誰が彼女に比べられるというのだ!