575 底値からの反発

宮本莉里は宮本崇をちらりと見て、加藤恋から渡されたブラックカードを宮本崇の目の前で振りながら、「向井さんから頼まれた用事があるの。今から手伝いに行くところだけど、叔父さん、この時に止めるつもりじゃないでしょうね?」

宮本崇の目はそのカードに釘付けになった。向井家の人々の銀行カードには少なくとも数百万円は入っているはずだ!

加藤恋は宮本家を出た後、すぐには警察署に戻らなかった。温井康彦の話によると、今の段階で福田隼人を保釈するのは難しいという。まず、福田隼人がその日クリスタル別館に行った証拠を見つける必要がある。福田嘉は彼の実母なので、証言には説得力がない。携帯電話の証拠も削除されてしまった。福田隼人が確かにクリスタル別館に呼ばれたことを証明できるのは深井須澄と石川直だけだが、この二人が福田隼人のために証言するはずがない。