577 石川直に身を任せる

石川直にとって、今の加藤恋は彼に頼みがあるのだ。結局のところ、福田隼人がその日クリスタル別館で何をしていたのかを知っているのは彼だけだから、加藤恋は絶対に彼を殺すことはできない。

加藤恋は美しい瞳で石川直を見つめ、その後橋本様に手を振って、「彼を連れて行きましょう」と言った。

石川直がこれほど傍若無人な態度をとれる主な理由の一つは、彼の背後にはあの深井須澄がいるからだ。井野忠にはまだ生還の可能性があり、深井須澄は利益を得るために簡単には彼を見捨てないだろう。

予想外にも加藤恋は彼を病院に連れて行った。半壊した足と霞んだ目で、石川直は福田嘉の前に立った。

「石川君、あなた...」福田嘉は信じられない様子で彼を見つめ、突然興奮した口調で言った。「福田隼人のために証言しに来てくれたの?あの日のことを全部見ていたのよね?殺人を犯したのは誰なの?うちの隼人は関係ないわよね?」