581 銃で脅す

加藤恋は一歩前に出て石川直の手首を掴んだ。痛みで石川直は手を離した。「加藤恋、あの女はお前にあんなことをしたのに、まだ助けようとするのか。福田隼人のことが好きだとしても、そこまで卑屈になる必要はないだろう!」

石川直の目には貪欲な光が宿っていた。今でも彼は加藤恋を完全に諦めきれていなかった。こんな美しい顔立ちと体つきを、どの男が断れるというのだろうか?

加藤恋は病室内に立っている竜川五郎に合図を送り、石川直を投げ飛ばした。

しかし石川直は竜川五郎の腰の銃に目をつけ、素早く奪い取った。

「このクソ野郎!」竜川五郎は不意を突かれ、このろくでなしに隙を突かれてしまった。彼が飛びかかろうとしたが、石川直はすぐに銃に弾を込めた。

「加藤恋、お前は確かに手腕がある。この老いぼれの足手まといがいなければ、もっと良い立場にいたかもしれないな」石川直は折れた足を引きずりながら、福田嘉の髪を掴んだ。

「何をするつもり?」まるでこの事態を予測していたかのように、加藤恋は特に驚いた様子を見せなかった。むしろ福田嘉の方が更に激しく泣き叫び、加藤恋がそこに立っているのを見て、より激しく罵り始めた。

石川直はドアの側に移動し、廊下を見渡しながら言った。「すぐに車と医者を用意しろ。お前たち二人は両手を頭の上に上げろ。さもないとこの老いぼれを殺すぞ」

竜川五郎が飛びかかろうとしたが、加藤恋はすぐに承諾した。「いいわ!」

加藤恋がこれほど協力的だとは思わなかった石川直も少し驚いた。彼は得意げに顎を上げ、この女がどれほど手強いと思っていたが、たいしたことはないと思った。

「奥様...近づかないでください。あいつはあなたを殺すかもしれません」竜川五郎は心配そうに言った。

加藤恋は体を横に向け、竜川五郎に安心させるような目配せをした。石川直が銃を奪った瞬間から、加藤恋は殺意を抱いていた。このろくでなしを片付けて、後で深井須澄に出てきてもらってこの件を解決しようと考えていた。

動かない加藤恋と竜川五郎を見て、石川直の目は狂気じみていた。彼の心は興奮を抑えきれなかった。彼はずっとこの日を待っていた。加藤恋に復讐し、自分が簡単に侮れる相手ではないことを思い知らせてやるつもりだった。