649 救いの手

高橋山は冷たい目で加藤恋を見つめ、傍らの藤井瑞樹はどう言えばいいのか分からなかった。

藤井瑞樹はこのような事態に遭遇するとは思わず、お爺さまの治療時間を無駄にしてしまった。目の前のこの女性にどこかで見覚えがあるような気がしたが、すぐには思い出せなかった。しかし、このように先輩を全く尊重せず、さらには暴言を吐く女性は全く信用できるものではなかった。

そのとき、高橋山は振り向いて手術器具を取り出し、簡単な消毒を行った後、深く息を吸い、地面に横たわる老人の首に小さな切開を入れた。

続いて酸素マスクを老人に装着させると、ずっと意識不明だったお爺さまが突然うめき声を上げ、顔色も幾分よくなった。

高橋山は得意げに鼻を鳴らした。「お嬢さん、これは漢方医学のようなインチキでは絶対にできないことですよ!」

その言葉が終わるや否や、加藤恋は突然口を開いた。「お爺さまの体をこんな状態にしてはいけません!先生、このままでは患者さんを死なせてしまいますよ。」

高橋山はその言葉を聞いて、心の底から冷笑した。

加藤恋の言うことなど絶対にありえない!

彼は先ほど一目で藤井のお爺さまの症状を見抜き、だからこそ素早く対応して、必ず藤井のお爺さまの呼吸を回復させなければならなかった。

これこそが原因不明で昏睡状態のお爺さまを治療できる唯一の方法なのだ!

この小娘は何も分かっていないくせに治死なんて言い出して、そんなことは絶対にありえない!

加藤恋は今や先ほどの気の抜けた様子は完全になくなり、前に進み出て藤井のお爺さまを指さした。「よく見てください。このお爺さまは血管が浮き出ているでしょう。このままでは今すぐ病院に運んでも間に合わなくなりますよ。」

「何が血管が浮き出ているだって?あなたにはっきり言っておきますが、あなたの手法で我々西洋医学の治療方法を判断しないでください。私はもう老人を救助しましたから、大丈夫です。」高橋山は無意識のうちにそちらを見たが、やはり加藤恋の言葉を信じなかった。

「お嬢さん、さっきも言いましたが、ここで大げさな物言いはやめてください。もしお金が必要なら差し上げますから、お爺さまの治療の邪魔をしないでください。」藤井瑞樹は焦りながら加藤恋を見つめ、思わず声を張り上げた。