650 薬に問題あり

加藤恋は高橋山に押されそうになってよろめいた。人を助けただけなのに、感謝されるかどうかなんて気にもしていなかった。彼女は体勢を立て直し、地面に倒れている老人を一瞥した。

先ほどの老人の言葉は明らかに全て聞こえていた。おそらく老人が言っていた「彼を見る人」というのは、老人にとって非常に大切な人なのだろう。この状況でも老人ははっきりと覚えているようだった。

藤井のお爺さまは振り返り、加藤恋の後ろ姿を限りない愛着の眼差しで見つめていたが、すぐに藤井瑞樹と他の医師たちに視界を遮られてしまった。

加藤恋は港町にもう一度行くための口実を考えていたところ、思いがけず福田隼人が彼女を港町に連れて行くと自ら申し出た。

「つまり、四方高次は今、港町の責任者になったということ?」加藤恋は少し心配だった。結局、彼は須田家で長い間潜伏していたのに、今は福田隼人の話を聞いて須田家に銃を向けている。将来、同じことを福田家にしないとは限らない。

加藤恋の心配を察したのか、福田隼人は笑いながら言った。「私と四方高次は長年の友人だ。須田家への対応は私の考えで、四方とは関係ない。」

「でも……」加藤恋はまだ不安そうで、なぜ福田隼人が須田家に対抗するのか理解できないようだった。

「須田家はもともと不動産業をやっているわけじゃない。彼らが持っている土地は多くの人が狙っているんだ。会社が設立された当初、父に須田家と連絡を取らせたが、須田家は法外な要求をしてきた。」

福田隼人はここまで話して無念そうな表情を見せた。本来は株式で相殺し、市場価格で買い取るつもりだったのに、須田家は彼を直接的に嘲笑したのだ。

福田隼人も慈悲深い人間ではない。どうせ須田家は今の状態では早晩買収されることになる。だから福田隼人も簡単には手を引かない。この土地は必ず手に入れるつもりだった。

加藤恋は頷いた。福田隼人がやりたいことなら、彼女は必ず支持する。セイソウリキももちろん福田隼人の後ろ盾となるだろう。

福田隼人は加藤恋にアウトドアアクティビティとエステを手配したが、加藤恋は唐沢行に誰か代わりの人を手配させ、自身は素早く装いを整えて医療博覧会へと向かった。

小瀧武と昭は早くから加藤恋を待っていて、彼女が車から降りるのを見るとすぐに出迎えに走ってきた。