542 治療を拒否

小瀧武の動きはゆっくりとしており、顔には惜しむ気持ちが隠せていなかった。それを見た深井須澄は非常に焦っていた。小瀧武が手にしているその神薬が一体何なのか理解できず、普段は寛容な彼がこんなにもケチになっている様子に驚いていた。

小瀧武がそれを取り出そうとしているのを見て、深井須澄は横に座って何の反応も示さない井野忠を急いで押した。井野忠はようやくゆっくりと立ち上がり、気の無い様子で小瀧武に感謝の言葉を述べた。

小瀧武が薬を取り出そうとした瞬間、先ほど玄関で応対していた若い男性の昭が慌てて駆け込んできた。小瀧武の動きを見た昭は急いで制止した。「師匠!何をしようとしているんですか?」

「昭、ちょうど良いところに来た。紹介しよう。この方は私の旧友の深井須澄だ。お前は私についてまだ日が浅いから知らないのも当然だ。そしてこちらは…」