雲原カジノは百年の歴史を持つ事業であり、その名前を出せば誰もが顔を立てざるを得ない。ましてや小さな幼稚園などではなおさらだ。
雲原明が携帯を取り出して誰かにメッセージを送っているようすを見て、木村桃は軽く一瞥し、顔に興奮の色が浮かんだ。今日のウィンザー幼稚園では、きっと面白い出来事が起こるだろう。
木村錦は心から喜んでいた。感情を隠そうとしていたものの、子供の性質上そう簡単には隠せるものではない。加藤恋の腕の中にいる木村明も、時折両手を振り、心の中でとても期待しているようだった。
「幼稚園、私、初めての幼稚園。」木村錦は加藤恋を見ながら喜びの声を上げたが、加藤恋は心が痛んだ。木村信彦の問題がなければ、この二人の子供たちはあんな悲惨な目に遭うこともなかったはずだ。今なら彼らは普通の生活を送れたかもしれない。彼女は可能な限り、子供たちに幸せを感じさせてあげたいと思った。
おそらく木村信彦も同じ考えを持っていたからこそ、子供たちを最高の幼稚園に通わせようとしたのだろう。
ここに通える家庭は、実際には裕福か身分の高い人々ばかりで、幼稚園内の設備や教育資源も非常に充実している。
園内を見渡すと高級車が立ち並び、ここで学べることは子供の成長にきっと良い影響を与えるはずだ。
加藤恋は入口を入ってすぐに、本物の銃を持った警備員が数人いることに気付いた。だから幼稚園の安全性も心配する必要はない。
子供たちを連れて受付に行くと、受付の先生は彼女に一瞥もくれなかった。
「こんにちは、二人分の入園手続きをお願いします。」
「一学期の学費は三十二万です。お支払い後、手続きのご案内をさせていただきます。」加藤恋はこの金額を聞いて舌を巻いた。一学期でこれほど高額とは、さすが貴族幼稚園だ。一般人には到底払えない金額だ。
加藤恋はつよしくんを見たが、彼は別の方を見ていた。どうやらこの厄介者は自分でお金を払うつもりはないようだ。
そう思いながらも加藤恋は立て替えて支払い、二人の子供を連れて入園手続きに向かった。
加藤恋が去った直後、禿頭の中年男性が入ってきて、先ほどの受付の先生に向かって怒鳴り始めた。「これはどういうことだ?」