630 最高級の処方箋

思いがけず宮本莉里は手を伸ばし、空中で田中慶の手から灰皿を奪い取った。彼女の表情は険しく、両目は真っ赤で、突然飛びかかって田中慶の頭めがけて灰皿を叩きつけた!

「田中慶、今日こそ殺してやる!」

「バシッ!」という鈍い音が響き、灰皿は瞬時に粉々になった!

血しぶきが飛び散り、悲鳴が上がった!

田中慶は体を震わせ、尻もちをついた。

加藤恋はその様子を見て口笛を吹き、宮本莉里は深く息を吸って言った。「私たち宮本家は名門なのよ。宮本崇の一言で、あなたが私にふさわしいなんて思ってないでしょうね?」

宮本莉里はゆっくりと頭を下げ、田中慶と宮本崇を鋭い目で見つめた。彼女の目は怒りに燃えていた。彼女は両親の死因には何か不自然なものがあると早くから気づいていたが、まさか叔父の口から直接そんな言葉を聞くことになるとは思っていなかった。

長年の屈辱と怒りが一瞬にして彼女の理性を奪い、今すぐにでも宮本崇を殺して復讐したい衝動に駆られた。

その時、宮本崇はゆっくりと顔を上げた。まるで地獄から這い上がってきた、人の命を奪いに来た悪鬼のように見えた。「今日こそお前と決着をつける!お前の父親のせいで俺はこんな目に遭ったんだ。お前は奴の娘だから、俺のものを全部返してもらう。」

宮本崇は近くの椅子を手に取り、よろめきながら宮本莉里に向かって突進してきた。しかし次の瞬間、卓上ランプが空気を切り裂く鋭い音が聞こえた。

彼は既に怪我をしており動きが遅かったため、背後の異変に気付いた時には反応が間に合わず、頭に激痛を感じた!

そして宮本崇は目の前が真っ暗になり、ドサッという音と共に低い椅子もろとも床に倒れた!

「血!血がたくさん!彼は...死んでないよね?」田中慶は驚いて後ずさり、壁にぶつかった。

加藤恋も最初は宮本莉里の行動に驚いたが、すぐに我に返り、宮本崇の脈を確認した。その後、目を真っ赤にしている宮本莉里に安心するよう合図を送った。床に倒れている宮本崇は大丈夫だった。

加藤恋が何か言おうとした時、宮本莉里が口を開いた。「社長、もう一つ重要な件があります!私たちの会社の海外製薬工場に関することです!」

高級な個室スイートで、高橋勇人は足を組んでゆったりとタバコを吸っていた。