632 薬方を贈る

そう言うと、宮本莉里の手を掴んだ。

宮本莉里は叫んだ。「離せ!この野郎!」

宮本莉里は強い力で引き上げられ、中間康と仁田泰も緊張した。確かに今は高橋勇人に頼みごとがあるが、もしこの野郎が目の前で社長を侮辱するようなことをすれば、それは絶対に許せない!

その時、怒鳴り声が響いた。「お前たちに優しすぎたようだな!」

次の瞬間、高橋勇人は宮本莉里の怒りに満ちた顔と向き合った。彼女の魅力的な顔立ちは極度の怒りで歪み、目は血走り、こめかみの血管が脈打っていた!

加藤恋は無力に首を振った。宮本莉里の性格はまだ磨きが必要だ。こんな事態に遭遇しただけでこんなに激昂し、高橋勇人に隙を突かれた。しかし、自分が初めて狙われた時のことを思い出すと、責める言葉は出てこなかった。

そもそもこいつらが先に手を出してきたのだ。

「死にたくなければ、今すぐ出て行け。ノバルティスはお前のような取引相手は必要ない」

「おやおや!」高橋勇人は袖の存在しない埃を払い、軽蔑的に笑った。「俺に逆らうのか?こんな気の強い女を味わったことがないんだが、そんなに強気なら、今からここで奴らの前でお前を犯してやる。お前の部下二人には土下座させてな。そうしたらノバルティスへの投資を考えてやるよ?」

そう言って、下卑た笑みを浮かべた。「後でオレが十分力を入れたら、お前らの会社の薬の効き目も試せるんじゃないか?」

宮本莉里は頭が爆発しそうになり、理性が怒りの炎で完全に焼き尽くされた!

彼女は血走った目で、突然茶卓のノートパソコンを掴むと、高橋勇人の頭めがけて思い切り叩きつけた!

「これなら私たちの会社が開発した薬の品質も試せるんじゃない?」

「社長...やめてください!高橋様に何かあったら、私たちは説明がつきません!」中間康は宮本莉里が本気で手を出したのを見て、急いで制止した。このまま騒ぎが大きくなれば完全に不利な立場になると恐れたのだ。

「宮本莉里!よくもそんな大胆な真似を!一体何をするつもりだ。今日俺に何かあったら、お前は港町から出られると思うのか?」

高橋勇人の言葉が終わらないうちに、その場にいた全員が宮本莉里の行動に衝撃を受けた。

高橋勇人は自分が殴られたことに気付くと、すぐに目を見開き、驚愕の表情で二歩後退し、自分の顔を押さえながら、信じられない様子で立ち尽くした。