人々がまだ混乱している中、宮本莉里は手に持った薬物検査報告書を振りながら、「高橋家は特効薬は彼らが独自に開発したと言っていますが、実はこの薬は高橋勇人のチームと私たちノバルティスのチームが共同で開発したものです」と言った。
「何?そんなはずがない!」高橋山は信じられない様子で高橋勇人を見た。
「そうじゃないんだ!お父さん、聞いてください。この薬の開発はもともと私たちのチームだけでやっていたんです。後からノバルティスの人たちが加わりたいと言ってきたけど、私は同意しなかった」高橋勇人の頭は猛スピードで回転していた。
宮本莉里はこの言葉を聞いて内心喜び、そして部下に合図して、あらかじめ用意しておいた薬物検査報告書を出席者全員に配布させた。
「そう?私の記憶違いかもしれませんね。でも、高橋家が開発したというこのいわゆる抗がん特効薬には確かに問題があるんですよ!」
宮本莉里は元々、彼らが展示台に上がったときに直接高橋家の偽りの顔を暴露するつもりだったが、加藤恋に止められた。
加藤恋の考えでは、高橋家を一気に打ち負かすには、彼らに対する大衆の怒りを引き起こす必要があった。
大衆の怒りを引き起こす最良の方法は、高橋家が人々をバカにして、効果のない薬を高額で売りつけたと思わせることだった。誰がそれに怒らないだろうか?
会場は瞬く間に沸騰状態に陥り、皆が高橋家のいわゆる特効薬に深い疑念を抱き始めた。
「高橋医師、この薬はあなたたちが独自に開発したものではないのですか?」
「私はさっき800万円でこの薬を買ったんですが、今返金してもらえますか?」
「やっぱりこの世にそんな良く効く薬があるわけないよね。抗がん剤が本当に開発できたら、儲けすぎじゃないか?」
元々高橋山に洗脳されていた人々が次々と立ち上がり、さらにノバルティスの資料も手に入れたことで、この特効薬が全く効果がないことを確信した。
宮本莉里の視線が加藤恋に向けられ、意見を求めているようだった。加藤恋の肯定を得て、宮本莉里はようやく口を開いた。「皆さんがノバルティスを信じてくださるなら、この機会に本当に効果のある特効薬を発表したいと思います。ただし、私たちの薬は抗がんではなく、喘息に対するものです」