658 天価薬を買う

人々は声の方を見ると、入札したのは意外にも無関心な表情の加藤恋だった。明らかに小瀧武、高橋山、井野忠は加藤恋がこのタイミングで値段を付けるとは思っていなかった。

小瀧武は少し驚いた。加藤恋はこの特効薬に問題があることを知っているのに、なぜこんな高値で購入しようとするのか。

高橋山の顔には軽蔑と意地悪さが浮かんでいた。彼はこの加藤恋が気骨のある人だと思っていたが、自分の特効薬が飛ぶように売れるのを見て、彼女も争奪戦に加わったとは思わなかった。

井野忠は加藤恋を骨の髄まで憎んでおり、加藤恋が彼に対抗するためだけにこんなことをしていると感じていた！

「三千万円」井野忠はこの最後の一つの特効薬を絶対に手に入れたかった。これが男性の問題に効果がある薬ではないと知っていても、井野忠は試してみたかった。

それに、自分の行動が高橋山を喜ばせれば、高橋山が彼のために特別に特効薬を開発してくれるかもしれない！

井野忠はこの加藤恋が厄介だと知っていた。彼女と争い続ければ、この最後の一つの薬がどれほど高くなるか分からない。しかも、彼女を知る限り、この価格では彼女には絶対に買えないはずだ。だから加藤恋は自分がこの特効薬で男としての力を取り戻し、高橋家に取り入ろうとしていることを知って、わざとここで邪魔をして価格を釣り上げているのだ。

もちろん、この加藤恋が自分の注目を引きたいという可能性もあるが、今は彼にはそんなことを考える余裕はなかった。体が回復すれば、どんな女性でも手に入れられるのだから！

だから彼は一気に三千万円と言った。この加藤恋がまだ続けられるとは思えなかった！

しかし加藤恋は三千百万円と言った。

以前なら、このような金額は彼女には想像もできなかったが、今では数千万円は彼女にとってはほんの小遣いに過ぎなかった。

加藤恋がまた値段を上げたのを聞いて、井野忠はほとんど怒り狂いそうになった。彼は歯ぎしりしながら福田桐子を見て言った。「あの小娘は俺に対抗しているだけだ。三千万円以上も出せるわけがない！」

福田桐子は急いで頷いて同意した。「私が思うに、彼女は本当に意地悪な心を持っています。以前の薬は最も高くても四百万円程度でした。三千万円もかけて買うなんて無駄遣いすぎます！」