高橋山は誇らしげに周りの人々を見回し、得意げな視線を飛ばした。まるでその場にいる全ての人が彼に敬意を表しているかのようだった。特に小瀧武を見るときの高橋山の目には、傲慢さが一層際立っていた。
「今回、我々高橋家が研究開発した薬はがん専用のもので、すでに臨床試験を経て、非常に良い効果を得てから市場に投入したものだ」高橋山はいわゆる特効薬の入った瓶を取り出した。5つの水晶の薬瓶が照明の下で輝いていた。
高橋勇人は口を開こうとしたが、先ほどの高橋山の態度を思い出し、何も言わずにいた。
実は時間の関係で彼らは臨床試験を全く行っておらず、ただ二匹の白ネズミと一匹の猿で薬物実験を行っただけで、大きな問題がなかったため直接発表したのだった。
「この薬を服用すると、患者は体が明らかに軽くなったと感じ、細胞も少しずつ自己修復し、がん化した細胞も徐々に回復していきます」高橋山は厚かましくも口にした。実際、彼はこの薬について全く理解していなかった。ただ高橋勇人から提出された関連資料を見ただけで、このプロジェクトに参加している部下が少し話したことを加えただけだった。
「さすが高橋家だ、この数年で医学界に多大な貢献をしてきたね!」
「高橋家の株価がまた上がりそうだ、早く買い込まないと」
「高橋家は西洋医学の模範だな、多くの人々を救ってきた」
人々は高橋山と高橋勇人の父子を見つめ、その目には尊敬の色が浮かんでいた。中には薬が何を治療できるのかもまだ理解していないのに、すでに値段交渉を始めている人もいた。
宮本莉里は少し焦って加藤恋にメッセージを送り、今が高橋家の人々の偽りの顔を暴く時かどうか尋ねた。
「持ち上げれば持ち上げるほど、落ちたときの衝撃は大きい。まだ急ぐことはない」加藤恋は宮本莉里に素早く返信した。今、彼らの薬はまだ3つ目が売れたところで、皆が残りの2つを手に入れようと躍起になっていた。
加藤恋は彼らが争奪戦を繰り広げるのを見守り、最後の一つの薬まで待った。
司会者がステージに上がり、「さて、いよいよ最も興奮の瞬間がやってきました!最後の特効薬の競売を始めます!」と言った。