第21章 20億円が水の泡に

一橋貴明は薄い唇を曲げて言った。「構わない。久我月が見つけられるかどうか、それだけ教えてくれればいい」

池田滝は涙を流さんばかりだった。

そのとき、執事が玄関に立ち、一橋貴明に敬意を表しながら、池田滝を横目で見て、こう言った。「七男の若様、池田さんがお見えになりました」

その言葉を聞いた池田滝は興奮して飛び上がった。「やった!兄貴、本当に良心的だね。もう少し遅かったら、一橋じじに切り刻まれるところだったよ!」

一橋...じじ???

その言葉を叫んだ後、池田滝は首筋に冷たい風を感じ、一瞬固まった。そこで自分がどこにいるのか思い出した。

体を硬直させながら振り返り、顔色が青ざめた一橋貴明を見て、説明した。「七男の若様、今のは聞き間違いです。あなたのことを言ったんじゃありません」

傍らの竹内北は怒り心頭だった。この池田滝は七男の若様を罵っただけでなく、振り返って七男の若様に嘘をつく。七男の若様を耳が聞こえないと思っているのか?

そう思っていると、池田滝が真面目な顔で言った。「七男の若様、決してあなたに挑発する意図はありませんでした」

竹内北の口角が激しく引きつった。

くそ、バカじゃないとそんな話信じるわけがない!

一橋貴明はこの馬鹿な池田滝を相手にする気も失せ、階下へ向かった。

池田延はソファに座っており、中村少華と中村楽がソファの反対側に座っていた。この光景を見て、彼は少し戸惑い、思わず中村楽の方を見た。

「何見てんのよ、美人見たことないの?」

中村楽は遠慮なく池田延に白い目を向け、それから自分の弟の世話を楽しんでいた。「もう少しこっちに来て、そう、そこ」

池田延は呆然とした。

これは何年も姿を消していた中村楽じゃないか。どうして戻ってきたんだ?しかも一橋貴明のところに?

突然、久我月の言葉を思い出し、やっと理解した。中村楽が不注意でなければ、池田滝が一橋貴明に捕まることもなかったはずだ。

重々しい足音が聞こえ、池田延は立ち上がり、一橋貴明を見た。「七男の若様、申し訳ありません。本日突然お邪魔して、失礼いたしました」

一橋貴明はまず中村少華の方を見た。そんな媚びを売る中村少華を見て、額に黒い線が落ちた。それから池田延の方を向いた。

「何か用件でも?」彼は手を上げて池田延に座るよう促した。