第19章 お前の良心は犬に食われたのか?

百里紅裳は言葉を失ってしまった。

しかし、考えてみれば、久我月を裏切るなんて、中村楽の性格からすれば、やりかねないことだった。

「それに、中村少華がいるじゃない。彼がいる限り、中村楽は大丈夫よ」久我月は大きな窓際に立ち、外の往来を眺めながら、煙を吐き出してリングを作り、妖艶に笑った。

「薄情な女ね!」

百里紅裳は電話の向こうで目を転がしたが、師匠には見えないと思い直して、やめた。

少し間を置いて、話題を変えた:「池田滝が帰ったけど、石ヶ村の実験はどうするの?」

「放っておきなさい。しばらくは大丈夫よ」久我月は目を細め、少し上がった目尻には、傲慢な色が満ちていた。

「そうそう、暇があったら仕事を引き受けてね。師匠、お金がないの」

一橋邸。

中村楽は一橋家に縛られたまま連れて来られ、しばらくして眉をひそめながら竹内北を見た:「氷男、縄を解いてくれない?手が痛いんだけど」