久我月が出ようとするのを見て、久我深海は老婆のことも構わず、急いで久我月を引き止めた。「月、行かないで、話がある!」
「早く言って」
久我月は冷たく言った。
ポケットからペロペロキャンディーを取り出し、ソファに寄りかかって、目を細めながら、すべてを見下すような傲慢な態度で座った。
久我深海は目に嫌悪感を浮かべたが、彼女を叱る気も失せ、直接本題に入った。「月、お前と一橋様との婚約は破談になったが、妹が嫁ぐことになった。うちは一橋家には及ばないから、持参金を少なくするわけにはいかない。お前の母さんが残した会社を、妹への持参金として譲渡してくれないか」
「そうよ」
松原蘭も急いで言った。「妹は身分が高く、もうすぐ一橋家の嫁になるのよ。お前は勉強もできないし、会社の経営なんてわからないでしょう。会社を妹の持参金にしなさい」