久我月は唇を軽く噛み、頭の中に真龍の寶玉が浮かび、掠れた声で言った。「あの玉、どこかで見たことがあるような気がするの」
「えっ?」
百里紅裳は一瞬驚いて、聞き間違えたのかと思った。
久我月の目に深遠な色が浮かび、淡々と言った。「そんなに驚かないで。あの玉を見た瞬間から、心が激しく揺さぶられたの」
「あの古い玉が並の品ではないことは確かよ」
それを聞いて、百里紅裳と池田延は顔を見合わせ、何も言えなかった。
その言葉は少し気味が悪く聞こえたが、二人とも知っていた。久我月が理由もなくそんな感覚を持つはずがないことを。
もしかしたら、あの玉は本当に久我月と何か関係があるのかもしれない。
池田延は話題を変えた。「久我家にはもう戻る必要はないけど、適切な身分は必要だろう。池田さんで働くのはどうかな?」