第30章 ずぶ濡れ

中村楽は笑って言った。「それは重要じゃないわ。重要なのは、彼女があなたたちに何かあると思っていることよ」

「もし彼女に会ったら、絶対にいい顔をしないでね。あの女、本当に厚かましいから!」

中村楽は栗本寧のことを心底嫌っていた。

一橋貴明の栗本寧への嫌悪に劣らないほどだった。

久我月は中村楽が送ってきたファイルを開き、ちらりと見て興味深そうに尋ねた。「彼女はお姫様病が重いって聞いたけど、どうしてこんなに成功できたの?」

栗本寧という名前は、この5年間のエンターテインメント界で最も輝かしい存在だった。

彼女は二十歳そこそこで、国内最年少の影后となり、数々の賞を受賞し、その後ハリウッドで活動を始めた。

そして、ハリウッドでも急速に地位を確立し、多くの人々の心の中で超えられない存在となった。