第177章 子供にはパパがいない、ママだけ

しかし心の中では、彼女と鈴木静海は二人とも最高級のルックスなのに、どうしてこんなに醜い赤ちゃんが生まれたのだろうと考えずにはいられなかった。

彼女が赤ちゃんの頬に手を伸ばすと、その小さな手に掴まれた。その瞬間、彼女の目に涙が溢れた。

「お子様のお父様はどちらにいらっしゃいますか？手続きのためにサインが必要なのですが」と看護師が中村楽に尋ねた。

本来なら家族の署名が必要だったが、看護師は探しても見つからず、中村楽は自宅の玄関前で倒れていたところを親切な隣人に病院へ運ばれてきたのだった。

その言葉を聞いて、中村楽は涙を抑えきれず、声を詰まらせながら言った。「この子には父親はいません。母親だけです」

看護師は何があったのか察したようで、中村楽が一人で子育てをしている姿を見て気の毒に思い、検査の手続きを手伝ってくれた。