「前回、鬼の医者が現れたのは中東でペストが発生した時でした。彼の後ろには数々の勢力が守っていて、天空連合に依頼を出しても音沙汰なしでした。私が懸賞令を出しても、誰も相手にしてくれませんでした」
小池紀寒の声だった。
一橋貴明が紀寒に鬼の医者を探すよう頼んだのは、彼が国家機関で働いているため、そもそも彼らの進む道が違うからだった。
しかし、明らかに効果はなかった。
久我月は瞳を止め、何も言わなかった。
当時、天空連合が急速に台頭した時、雷のような勢いで他のハッカー連盟を抑え込み、一躍連盟の頂点に立った。
天空連合のハッカーたちは、世界最高峰のハッカーばかりで、彼らのリーダーであるハッカーXは、正体不明の存在だった。
しかし、紀寒が予想もしなかったことに、今回彼と一橋貴明が出した懸賞令は、Xが直接断ってきたのだ。