一橋貴明がドアの隙間から手を伸ばしてタオルを取り、礼儀正しく微笑んで「ありがとう、月瑠」と言った。
礼儀正しいものの、声には笑みが含まれており、機嫌は良さそうだった。
久我月は隣の椅子に座ってゲームを続けていると、すぐに一橋貴明が出てきた。
いや、違う。バスタオル一枚を巻いて出てきたのだ。
久我月は仙人のようなオーラを放つ一橋貴明を見て、暑さのせいか頬が熱くなり、思わず尋ねた。「なぜ着ないの…」
一橋貴明は笑って「暑いから」と答えた。
久我月は16度に設定されたエアコンを見て、そして鳥肌が立っている自分の腕を見たが、何も言わなかった。
一橋貴明は少女の顔をじっと見つめ、その瞳には熱い感情が満ちていた。
「お坊ちゃん」
久我月は彼に服を渡し、エアコンの温度を上げた。「私も見た目重視で寒さは我慢するけど、あなたはもう年なんだから、そんな無理はできないわ。年取ったら色々病気になっちゃうわよ」