第196章 家門の不幸よ

それに、松原蘭の性格からして、彼女は必ず無一文で出て行くことを拒むはずだ。だから、会社に行って騒ぎを起こし、結婚当初は貧しかったのに今は裕福になったと言い出すに違いない。

久我父さんは浮気されたことを言い出せないから、松原蘭が会社で騒ぎを起こしたら、黙って損を被るしかない。

そうなれば、彼のライバルたちも必ずこの機会に彼を追い込もうとするだろう。

松原蘭は久我父さんの決意が固いのを見て、彼の腕を掴んで泣きながら叫んだ。「耀宗、これだけ長い間一緒にいたのに、こんなちっぽけな信頼さえくれないの?」

久我父さんは考えれば考えるほど腹が立ち、目が怒りで赤くなった。「信じたいのはやまやまだが、何を信じろというんだ?」

「普通のハグや抱擁じゃない、裸で抱き合っていたんだぞ。お前たちが何をしたか、誰にもわからないじゃないか?」

「何もなかったと言っても、誰も信じやしないだろう!」

「触るな、吐き気がする!」

久我父さんは松原蘭を突き飛ばし、ネクタイを強く引っ張った。「お前がこんな女だと知っていたら、どんなことがあっても結婚なんてしなかった!」

「お前は鈴木敏の指一本にも及ばない!」

そう言って、久我父さんは振り返りもせずに階段を上がっていった。

松原蘭はその言葉を聞いて、一瞬呆然とした。

彼女は久我父さんが実は鈴木敏のことをとても好きで、その美貌に惹かれていることを知っていた。まさか、彼の心の中では、自分が鈴木敏と比べものにならないとは思わなかった。

「家の恥、家の恥だよ...」老夫人も頭が痛くなるほど腹を立て、杖をついて麻雀をしに出かけた。

家でこんなことが起きても、彼女はそれほど気にしていなかった。結局、鈴木敏というキツネ女が毎年くれる配当金で、何世代も生活できるのだから。

家に松原蘭がいようがいまいが、彼女はまったく気にしていなかった。

どうせ家にはお金があるし、息子が離婚しても、三度目の結婚をしたがる女性はいくらでもいるだろう。

久我羽も言いようのない気持ちで、思わず不満を漏らした。「お母さん、どうしてこんなことになったの?久我月を王丸社長に差し出すはずだったのに、最後にお母さんが自分を...」

自分を王丸社長に差し出したという言葉は、久我羽には言えなかった。やはり、自分を産み育ててくれた母親なのだから。