彼は家の次男の性格からして、本当に恋をしたら、身分や地位など気にせず、何も顧みないだろうと思った。
ただ、中村少華にはそれが分からないだけだった。
「俺が彼女を好きだって、いつの話だ?」
中村少華は中村静加を頭がおかしいと見なした。百里紅裳に対して少し注目しただけで、それが好きだというのか?
中村静加:「???」
「お前が彼女のことを好きじゃないなら、栗本哲也が彼女をいじめたことで怒るはずがないだろう?」
「姉さん以外の女性のことで、こんなに怒るのを見たことがない。まるで戦場にいるような殺気だったぞ」
彼は中村少華とはいとこ同士であり、戦場で生死を共にした戦友でもあった。次男がどの女性に対しても眉をひそめたことなど一度もなかった。
あの時、姉さんが事件に巻き込まれた時の中村少華の、鈴木静海を殺したいような血に飢えた目つきを、今でも覚えている。