第258章 本当に次郎様だ!

中村少華は二人を見て、表情にはあまり大きな変化はなく、ただ眉を少し上げただけだった。

中村静加は嬉しそうだった!

空港で戦友に出会える確率は宝くじに当たるようなもので、軍人は通常海外に行けず、国際任務の時だけ出国申請ができるのだ。

「次郎様!」

林由綺は中村少華を見つめ続け、鳳眼には細かな星のような輝きが溢れていた。

その視線は中村少華に向けられてから、一瞬も離れることはなかった。

次郎様が突撃隊を去ってから、彼女はほとんど会えていなかった!

休暇中でも、戦友と会おうとしても、中村少華との約束を取り付けるのは難しかった。

林由綺はもう一生、中村少華に会えないのではないかと思っていた。

しかし思いがけず、今回の任務で彼に会えたのだ!

男は上質なオーダーメイドのスーツを着こなし、凛々しく背筋を伸ばし、短髪で、軍人の気質が漂い、かつて軍で伝説となった頃と全く同じだった。

そして林由綺の隣を歩いていた男は加藤茂林といい、通称ゴリさんだった。

「さっき林由綺が次郎様を見たと言ったとき、私は見間違いだと思ったんですが、本当に次郎様でしたね!」加藤茂林は笑いながら言った。

林由綺は目を伏せ、静かな声で言った。「次郎様は軍人出身だから、他の人とは違う立ち姿をしているんです。」

加藤茂林は短髪を撫でながら冗談めかして言った。「やっぱり林女王が一番次郎様のことを分かってるね。」

「……」

林由綺の伏せた瞳が僅かに震えた。

中村少華はずっと黙っていて、中村静加だけがペラペラと話し続けていた。

「こんなに久しぶりなんだから、どこかのレストランで座って話しませんか?」林由綺が提案した。

中村静加は頷き、中村少華を連れてレストランへ向かった。

窓際の席に着くと、林由綺と加藤茂林は特訓基地のことを話し始め、中村少華はほとんど口を開かなかった。

男は時々携帯を取り出して見ていたが、誰からの連絡を待っているのかは分からなかった。

林由綺は中村少華の気が散っているのに早くから気付いていた。彼女は試すように尋ねた。「次郎様、何か注文されますか?飛行機…」

言葉が途中で携帯の着信音に遮られた。

中村少華は着信を確認すると、表情が少し変化した。

林由綺は、その電話がかかってきた時、中村少華の表情が冷たさを失ったように感じた。