ふと思い出したように、牧野民は恐る恐る尋ねた。「あのチップの移動ルートは、匿名で送ってきたのはあなたですか?」
鈴木月瑠は美しい眉を少し上げ、気ままな口調で言った。「そうでなければ、あなたたちにチップの動きが分かるはずがないでしょう?」
「月瑠姉!もしデルタにバレたら、あなたがやったって...」
言葉が終わらないうちに、鈴木月瑠に遮られた。
鈴木月瑠の目元には邪気が漂い、目の下には赤い血管が浮いていた。「バレたらどうだというの?私に手を出す勇気なんてないわ!」
「...」
牧野民は返す言葉がなかった。
彼の月瑠姉はいつも傲慢で横柄だが、そうできる実力は確かにあるのだ。
鈴木月瑠は以前デルタで、セキュリティセンターの主任エンジニアを務めていた。彼女なしでは、デルタは今の地位にはなかったはずだ。