第282章 本気で怒った!

ふと思い出したように、牧野民は恐る恐る尋ねた。「あのチップの移動ルートは、匿名で送ってきたのはあなたですか?」

鈴木月瑠は美しい眉を少し上げ、気ままな口調で言った。「そうでなければ、あなたたちにチップの動きが分かるはずがないでしょう?」

「月瑠姉!もしデルタにバレたら、あなたがやったって...」

言葉が終わらないうちに、鈴木月瑠に遮られた。

鈴木月瑠の目元には邪気が漂い、目の下には赤い血管が浮いていた。「バレたらどうだというの?私に手を出す勇気なんてないわ!」

「...」

牧野民は返す言葉がなかった。

彼の月瑠姉はいつも傲慢で横柄だが、そうできる実力は確かにあるのだ。

鈴木月瑠は以前デルタで、セキュリティセンターの主任エンジニアを務めていた。彼女なしでは、デルタは今の地位にはなかったはずだ。

デルタの連中があまりにも厚かましかったからね。

牧野民は上層部に直接月瑠だと言えず、遠回しに切り出した。「今は上層部もまだあなただとは知りません。でも押さえきれないと思います。だから...」

国のお偉方に謝罪に行ったらどうですか、許してくれるかもしれませんよ。

鈴木月瑠は唇の端を少しつり上げ、淡々と言った。「あなたが押さえる必要はないわ。知らないふりをしていればいい。私のところまで辿り着けるなら、それは彼らの実力ってことよ」

彼女は牧野民を一瞥して言った。「この件では、栗本放治兄弟が巻き込まれないようにするだけでいい。残りは私が処理するわ」

「でも...」

牧野民は眉をしかめた。「いや、今なんて言いました?栗本放治兄弟?どうして彼らが関係あるんですか?」

鈴木月瑠の表情は相変わらず無表情で、淡々と言った。「栗本放治は私の彼氏の友達よ。四捨五入すれば、私の友達ってことになるわ」

「私の彼氏は私の大甥っ子で、さらに四捨五入すれば、栗本兄弟も私の大甥っ子ってことになるわ」

「だから、親族で争うわけにはいかないの」

言い終わると、彼女は呆然とする牧野民を見た。

彼氏の友達ならまだしも、どうして大甥っ子になるんだ?

いや、彼氏が大甥っ子なの?

「月瑠姉、彼氏って誰なんですか?」牧野民は我慢できずに尋ねた。誰がそんなに大胆で、月瑠姉と恋愛関係を持てるのか知りたかった。

鈴木月瑠は簡潔に答えた。「一橋貴明よ」

牧野民:「...」