第320章 悪夢に怯えたの?

マイクから玉のように優しい男性の声が聞こえた。「お嬢ちゃん、もう十分遊んだかな?」

その声は特徴的で、からかうような調子を帯びていた。優しく心地よい声だったが、それを聞くと心が凍るような感覚に襲われた。

その声を聞いて、鈴木月瑠の整った眉目に、冷たい敵意が浮かんだ。その声音は霜のように冷たかった。

「あなたね!」

こんなに長く離れていたのに、やはり彼は私を見つけ出した!

「月瑠、そんな口調で話すの?」

向こうの男性の声は相変わらず優しく、まるで怒った少女をなだめるかのように、諦めと愛情を込めて話した。

鈴木月瑠の表情は冷たさに満ちていた。動じる様子もなく、口角に冷ややかな笑みを浮かべて言った。「一体何がしたいの?」

「ふふ……」

向こうの男性は軽く笑い、ゆっくりと話し始めた。「伽藍に頼んでRBC2号試薬を取りに行かせたそうだね。2号試薬は君が残した配合をもとに改良したバージョンで、まだ試験段階だ。あの子は研究所の人間じゃないから、そう簡単には手に入らないよ」

鈴木月瑠の表情はますます冷たくなっていった。

彼女は伽藍に一ヶ月の期限を与え、自身もMX研究所に薬草の培養を急がせ、自分の退路を用意していた。

しかし、この時期に彼から電話が来るとは思わなかった。

鈴木月瑠は細めた瞳で冷たく、目尻を下げながら冷ややかに尋ねた。「言いなさい、何がしたいの?」

受話器からため息が聞こえ、男性は諦めたように言った。「月瑠、私に悪意があるわけじゃない。君は私の後継者だ。ただ、戻ってきてほしいだけさ」

鈴木月瑠は冷笑した。「夢でも見てるの!」

電話の向こうの人物は、確かに恩がある。しかし、デルタ研究所のやっていることは非人道的で、彼らと同じ轍を踏むことはできなかった。

それに……

向こうの男性は鈴木月瑠がこう反応することを予想していたかのように、全く怒る様子もなく、ゆっくりとした口調で話した。「月瑠、よく考えてから断りなさい」

「RBC2号試薬は私が持っている。君も、君の側にいるあの小娘も手に入れることはできない」

「こんなに長く離れていて、初めて一人の男のためにデルタに物を取りに行くなんて。彼が死んでも本当に構わないの?」

男性がゆっくりと話す中、鈴木月瑠の心は徐々に冷えていった。