第321章 斉田あきひろが消えた!

「中村法医、中村法医……」

西治呂は部屋のドアを叩き続け、焦りながら中村楽を呼んでいた。「中村法医、大変です。斉田あきひろがいなくなりました!」

目をこすりながら目を覚ました中村楽は、後半の言葉を聞いた途端、眠気が一気に吹き飛んだ。急いで立ち上がりドアを開けた。

「どうしていなくなったの?」

中村楽の声色が急に沈み、声に冷たさが漂った。

彼らは警察署の招待所に宿泊していた。斉田あきひろが何か愚かなことをするのを恐れて、中村楽の部屋は彼の隣だったのに、どうして人がいなくなったのか?

西治呂は素早く事情を説明した。「夜中の3時に、斉田あきひろが市内で気分転換したいと言って、署から車を借りて出かけました。」

「夜食を買って帰ると言っていたんですが、4時近くになって心配になって電話をかけたら、電源が切れていました。」

そう言いながら、彼は悔しそうに髪をかきむしった。

気づくべきだったんだ。この状況で斉田あきひろに気分転換なんてできるはずがない。

「彼の居場所は特定できましたか?」

中村楽は目を細め、瞳には暗い冷気が宿っていた。

西治呂は重々しい口調で言った。「位置情報によると、札幌市の北西方向、つまりバガン地域に向かっています。人が住んでいない地域です!」

バガン地域は無人地帯なので、そこには警察の管轄外の不法者が多く集まっていた。

その地域では砂金採りが盛んで、暴力事件が頻繁に発生していた。

「何の用があってそんなところに?」中村楽は痛む眉間を押さえた。

もともと午前3時過ぎには札幌市の空が暗くなり始めたばかりで、今もまだ暗く、朝の8時か9時にならないと太陽は出ない。

斉田あきひろが深夜に車で出て行って、もし何か起きでもしたら、中村楽はどうやって伊藤哲に説明すればいいのか?

西治呂は素早く中村楽を見て、言った。「おそらく以前の調査で、ナンバープレートを付け替えた車がその方向に行ったと疑われ、後に正確な情報が入って我々も見に行きましたが、人は見つからなかったので、斉田あきひろは……」

これは斉田あきひろが知らなかったはずの情報だが、西治呂は彼がどうやって知ったのか分からず、そのため彼が夜中にバガン地域に向かったのだった。

以前警察がバガン地域に行った時は人影すら見つからなかったのに、斉田あきひろが今行っても何の意味があるのか?