中村楽の隣にいた警官が追跡装置を持ち、突然重々しい声で言った。「もう位置を追跡できなくなりました!」
つまり、斉田あきひろはすでにバガン奥地に到着したということだ。
二台のパトカーはまだ前進を続け、約百キロ走ったところで、ようやく停車した。
もう正午で、黄砂が舞い、周りは小さな丘ばかりだった。彼女は口を固く閉じ、砂が入らないようにしていた。
砂漠のような場所では、たとえ人が入っても、すぐに足跡は黄砂に覆われてしまう。
「なぜまったく役に立たなくなったんだ?」西治呂は追跡装置を受け取って見つめ、表情は深刻で、眉をひそめていた。
斉田あきひろが乗って行ったパトカーの位置追跡システムが突然消えていることに気付いた。
しかし、これは常識に反している。これは警察専用の位置追跡システムだ。砂漠では電波の状態は不安定だが、位置情報が完全に消えることはないはずだ。