「店、店長、後ろに並んでいる黒いマスクの男性に気付きましたか?」
その時、注文を担当している店員が店長の袖を引っ張り、列に並んでいる人を見て言った。「あの人の体格や身長が写真と似ているんです。それに目つきが怪しくて、あのお姉さんの方をずっと見ているんです。」
「あの人の瞳が真っ黒で、カラコンをしているみたいで...」
店員は手で指名手配書の顔の半分を隠しながら言った。
店長は指名手配書を見て、そしてマスクをした男を見比べると、その場で足がガクガクと震えた。「本当だ、よ、よく似ている...」
大村鋭市が自分の店に入ってくることを恐れていた店長は、万が一を考えて急いで携帯を取り出した。
「急いで、みんな気を付けて、絶対に気付かれないように。私が警察に通報します!」
...
夏目隊長はタピオカ店からの通報を受けると、すぐに江川一渡に電話をかけた。「江川隊長、観亭通りのタピオカ店の店長から通報があり、容疑者が店内にいる可能性があります!」
「すぐに支援に向かいます!」
運転中の江川一渡は即座に車を転回させタピオカ店へ向かった。
江川一渡と合流したばかりの五班は、眉をひそめて言った。「何?本当に容疑者がタピオカ店にいるって確実なのか?間違いじゃないのか?」
「耳が聞こえないのか?可能性があるって言ってるだろ?」
江川一渡は苛立ちながら、五班を横目で見て言った。「観亭通り付近の隊員に通知して、すぐに張り込んで逮捕のチャンスを待て!」
五班は大きく目を回して、注意を促した。「観亭通り付近には五つの大通りがあって、小道は数え切れないほどある。本当に大村鋭市だとしたら、逃走ルートは多すぎる。それに、彼は対追跡のプロだ。どうやって捕まえるつもりだ?」
江川一渡は「捕まえられなくても無理にでも捕まえる!特殊捜査課の面目が丸つぶれだ。お前は恥知らずでもいいが、俺は違う!」
警察署に笑われるのはどうでもいいが、月瑠に笑われるのは絶対に嫌だった。
...
タピオカミルクティーを作り終えた店員は鈴木月瑠を見て、そして注文に並んでいる大村鋭市を見ると、手が震えて仕方がなかった。
店員は震えながら鈴木月瑠を見て、どうやって安全にタピオカを渡せるか悩んでいた。「あの、お姉さん...あなたのタピオカ...」