第347章 お前の命を取りに来た者

彼は邪悪な目つきで小池紀之を見つめ、悪魔のような笑みを浮かべた。「小池隊長、やる勇気があるのか?」

小池紀之はジャックが冗談を言っているとしか思えなかった。

軍人出身の彼なら、通常なら三人相手でも問題ないはずだが、今は重傷を負っている。どうやって戦えというのか?

飛び込んでいけば自殺行為だ。小池紀之はそんなに馬鹿ではない。

しかし、鈴木月瑠を死なせるわけにはいかない!

鈴木月瑠は射撃技能が優れているとはいえ、か弱い女性一人では、体格のいい男たちを相手に不利は避けられない。

それに、鈴木月瑠が銃を使えるとしても、相手も銃を持っている。これでは比べものにならない。

ジャックの挑発的な目つきに対し、小池紀之は振り向いて鈴木月瑠に言い聞かせた。「俺が奴を引き付けておく。チャンスがあったら逃げろ。俺のことは気にするな!」

「逃げられる者は逃げろ。分かったか?」

虎も平地に下りれば犬に噛まれる。小池紀之は鈴木月瑠と過ごすうちに、性格まで歪んでしまっていた。

鈴木月瑠は冷静に小池紀之の死に向かう姿を見つめ、無関心な口調で言った。「安心して、あなたのことなんて気にしたことないわ」

小池紀之:「???」

分かっていたはずだ。鈴木月瑠と一緒にいると自分の性格まで歪んでしまう。彼女の口から良い言葉が出るはずがない。

七郎はこの間、どうやって耐えてきたのだろう。

もう鈴木月瑠のことは気にせず、小池紀之は豹のような素早い動きでジャックに襲いかかった。

ジャックも並の相手ではなく、小池紀之の最初の組み手を避けた後、攻撃しようとしたが、小池紀之の横薙ぎで体勢を崩された。

小池紀之は負傷しているものの、ジャックのような贅肉がなく、独自の技も持っていた。それが彼の強みだった。

「いいぞ、小池紀之、見くびっていたようだな!」ジャックの肉付きのいい顔に、不気味な光が走った。

そう言いながら、小池紀之に向かって拳を繰り出した。迷彩服の下の腕に筋肉が盛り上がっている。

拳が繰り出される時、空気が裂かれるような音がした。

小池紀之は一度は避けたが、二度目にはジャックの拳が腹部に命中した。

腹部は以前から傷を負っており、数歩よろめいた。

小池紀之は長くは持たないことを知っていたが、死にたくないという気持ちが心の中で燃えていた。