第350章 これは自ら罠に飛び込むのではないか?

小池紀之は無優を一瞥して「何を騒いでいる?」と言った。

「鈴木月瑠がいなければ、あなたたちの七男の若様のお祖母様も目覚めないし、私も生きていられない!」そう言って、一橋貴明に薬を飲ませようとした。

小池紀之は大変な苦労をして、やっと一橋貴明に薬を飲ませることができた。

薬を飲ませてから3分も経たないうちに、鈴木月瑠は一橋貴明の心臓に詰まっていた弾丸の破片を取り出し、彼女特製の止血散をふりかけた。

鈴木月瑠が包帯を巻いているとき、突然彼の右肩に古い歯形の跡があるのに気付いた。

彼女は一瞬固まり、中東での光景が脳裏をよぎった。

その光景の中の男性の顔が、徐々に一橋貴明の顔と重なっていき、鈴木月瑠は眉を上げ、目に深い光が宿った。

鈴木月瑠は少し体を傾け、何気なく小池紀之に尋ねた。「一橋貴明は数年前、中東に行ったことがある?」