小池紀之は無優を一瞥して「何を騒いでいる?」と言った。
「鈴木月瑠がいなければ、あなたたちの七男の若様のお祖母様も目覚めないし、私も生きていられない!」そう言って、一橋貴明に薬を飲ませようとした。
小池紀之は大変な苦労をして、やっと一橋貴明に薬を飲ませることができた。
薬を飲ませてから3分も経たないうちに、鈴木月瑠は一橋貴明の心臓に詰まっていた弾丸の破片を取り出し、彼女特製の止血散をふりかけた。
鈴木月瑠が包帯を巻いているとき、突然彼の右肩に古い歯形の跡があるのに気付いた。
彼女は一瞬固まり、中東での光景が脳裏をよぎった。
その光景の中の男性の顔が、徐々に一橋貴明の顔と重なっていき、鈴木月瑠は眉を上げ、目に深い光が宿った。
鈴木月瑠は少し体を傾け、何気なく小池紀之に尋ねた。「一橋貴明は数年前、中東に行ったことがある?」
「ああ」
小池紀之は深く考えず、鈴木月瑠がこのことを知っているのは、彼とジャックの会話から聞いたのだろうと思った。「なぜそんなことを?」
「ただの質問よ」
鈴木月瑠は首を振り、一橋貴明を見つめ、目元に笑みが浮かんだ。
一橋貴明の出血が止まったのを確認すると、鈴木月瑠は彼の脈を診た。「もう危険期は脱しました。しっかり養生すれば大丈夫です」
鈴木月瑠の技術を完全には信用していなかったものの、一橋貴明の顔色が良くなっているのを見て、皆はようやく安堵の息をついた。
竹内北は小池紀之の方を向き、尋ねた。「小池隊長、外の状況はどうなっていますか?」
「捨狼会分堂の青木堂の者たちが、全員来ています」
小池紀之は眉間にしわを寄せ、状況を全て説明した。「我々の居場所がばれたか、あるいは最初から狙われていたのかもしれません」
「暗殺者連合との荷物は無事に届けられましたが、捨狼会は確かに厄介です。他の勢力がいるかどうかも分かりません」
竹内北は顔色を変え、何か言おうとした時、無極が外から急いで入ってきた。
「先ほど山麓で火の光が上がりました。確認に行ったところ、捨狼会の者たちが、30分以内に七男の若様を引き渡さなければ、山を爆破すると言っています」
無極は深刻な表情で話した。
これを聞いて、全員の目に怒りの炎が燃えた。竹内北は小池紀之を見て「小池隊長、七男の若様はまだ目覚めていません。どうしましょうか」