小池紀之の目は暗く沈んでいて、説明した。「捨狼会が裏山を諦めたのは、裏山が地雷原だからです」
国境地帯は元々地雷が多く、これは廃棄された軍事基地で、周辺に住民もいないため、撤去されずに残されていた。
山脈は広大で、地雷原も当然広範囲に及び、裏山一帯は赤線で立入禁止になっていた。
爆発物処理の専門家でさえ精密機器を使っても無事とは限らず、しかも一橋家の闇ガードは全員が軍人出身というわけではなく、地雷処理は得意ではなかった。
特殊部隊出身であっても、地雷処理の際に一切の事故が起きないと誰が保証できるだろうか。
小池紀之が自慢するわけではないが、裏山で地雷に吹き飛ばされるくらいなら、正面から彼らと死闘を繰り広げた方がましだと思った。
鈴木月瑠は目を伏せ、まつ毛が影を落とし、瞳の奥には淡い感情が浮かんでいた。「時間がない。小池紀之、全員を集めて装備を整え、裏山へ撤退して」