彼女は一橋貴明の視線と合わせる勇気がなく、顔を背けて言った。「私の心臓、何か変だわ。鼓動が不規則なの」
一橋貴明は低く笑って言った。「心臓に問題はないよ。突然お兄さんに甘えたから、慣れていないだけだ」
「これからは、もっとお兄さんにキスする練習をしないとね。そうすれば、こんな問題も起きなくなるよ」彼は目を細めて笑い、その目尻は桃の花のように美しかった。
鈴木月瑠は「……」
彼女が立ち去ろうとした時、一橋貴明に手首を掴まれた。
一橋貴明は鈴木月瑠の手を離さず、眉間に笑みを浮かべながら尋ねた。「僕を迎えに来たんじゃないの?どこに行くの?」
「もう夜の7時よ。うちには門限があるの」
鈴木月瑠は彼の腕時計を見て言った。「手を離してくれない?」
一橋貴明は優しく微笑みながら、艶やかな声で言った。「月瑠、甘えておいて逃げるつもり?」