鈴木月瑠は尋ねた。「好きな女性はいますか?つまり、彼女はいますか?」
遠藤信之は不意を突かれて「???」
彼は少し戸惑いながら鈴木月瑠を見つめた。「なぜそんなことを聞くんですか?」
「余計なことは気にしないで、答えてくれればいいの」鈴木月瑠は、薄い笑みを浮かべた男の瞳を見つめ返し、眉間にしわを寄せた。
遠藤信之は小さく笑い、少し考えてから真剣に答えた。「申し訳ありません。好きというのがどういうものか分かりません」
鈴木月瑠は「……」
「つまり…好きな人と離れている時、自然とその人のことを考えてしまって、目にも心にもその人のことしか映らない、そんな感じよ」
彼女は遠藤信之に丁寧に説明しながら、頭の中に一橋貴明の顔が浮かんできた。
鈴木月瑠は首を振り、続けた。「たとえその人が見た目が良くなくても、あなたの目には、世界中のどんなものよりもその人が特別に見える」