鈴木月瑠は尋ねた。「好きな女性はいますか?つまり、彼女はいますか?」
遠藤信之は不意を突かれて「???」
彼は少し戸惑いながら鈴木月瑠を見つめた。「なぜそんなことを聞くんですか?」
「余計なことは気にしないで、答えてくれればいいの」鈴木月瑠は、薄い笑みを浮かべた男の瞳を見つめ返し、眉間にしわを寄せた。
遠藤信之は小さく笑い、少し考えてから真剣に答えた。「申し訳ありません。好きというのがどういうものか分かりません」
鈴木月瑠は「……」
「つまり…好きな人と離れている時、自然とその人のことを考えてしまって、目にも心にもその人のことしか映らない、そんな感じよ」
彼女は遠藤信之に丁寧に説明しながら、頭の中に一橋貴明の顔が浮かんできた。
鈴木月瑠は首を振り、続けた。「たとえその人が見た目が良くなくても、あなたの目には、世界中のどんなものよりもその人が特別に見える」
「もう十分分かりやすく説明したと思うけど、理解できる?」
そう言って、彼女は呆れたように遠藤信之を見た。
遠藤信之はようやく理解したようで、首を振った。「理解はできましたが、他の女性を好きになったことはありません」
鈴木月瑠は呆れて「子供の頃もない?女の子に告白したことも?」
「ありません」
「じゃあ、恋愛経験もないの?」
「ありません」
「……」
鈴木月瑠はこの縁結びの陣が、どれほど長く破壊されていたのか分からなかった。
しかし遠藤信之の様子を見ると、追っかけは多いようだが、本人は全く興味を示さない。
彼女の三番目の兄のように一生独身なのだろうか?
いや、三番目の兄は独身というわけではない、一橋景肴がいるじゃないか。
しかし、もしかしたら縁結びの陣の影響で、遠藤信之が感情を理解できないのかもしれない。
鈴木月瑠は口角を上げ、ゆっくりと言った。「遠藤さん、あなたはなぜ好きという気持ちが分からないのか、その理由を知りたいですか?」
彼女はまた新しい稼ぎ方を見つけた。
この方法は少し不適切かもしれないが、人の困りごとを解決できるし、功徳も積める。
遠藤信之は淡々とした口調で「好きな人に出会っていないだけです」
もし適切な人に出会っていれば、好きとはどういうものか分からないはずがない。
「そうじゃないわ」