第390章 骨董品、価値は計り知れない

「おばさま」鈴木月瑠は白石思曼に向かって愛らしく呼びかけ、ソファに座っている女性を見た。

伊藤のぞみは自分の服装が上品だと思っていたが、実際には月瑠が見るに堪えないほど俗っぽかった。

そして、月瑠は伊藤のぞみの目に浮かぶ傲慢な軽蔑が嫌いで、ちらりと一瞥しただけで、白石思曼と話を始めた。

白石思曼は月瑠の手を引いてソファの方へ歩きながら「どこに行ってたの?こんな遅くまで。食事は済んだ?」

「一橋家で、一橋おばあさまと食事をしてきました」

月瑠は白石思曼の前ではいつも素直だった。「これは一橋おばあさまからいただいたものです。とても貴重なので、家に金庫を用意していただけませんか?」

彼女は精巧な巾着を取り出した。巾着の右下には小さな「一橋」の文字が刺繍されていた。

「一橋太夫人からもらったの?」

白石思曼はその巾着を一瞥した。一橋家の長老だけが使用できる祝儀袋のスタイルだった。

巾着の膨らみから、数個の腕輪が入っているようだった。

白石思曼は中身については聞かず、にこやかに月瑠に尋ねた。「おばあさまは何か言ってた?」

「初対面のお礼だと仰って、WeChat(微信)も交換しました」月瑠は正直に答えた。

白石思曼はまだ特に反応を示さなかったが、傍らの伊藤のぞみは心臓が一瞬止まりそうになった。

一橋太夫人が月瑠に初対面の贈り物?

通常、顔合わせの際に目上の者が目下の者に贈り物をするものだ。

まさか、一橋太夫人は月瑠を孫の嫁として認めたのか?

それは困る!

月瑠は彼女が長男の嫁に望んでいた相手なのに!

白石思曼は何かを悟ったようで、笑いながら言った。「太夫人のお気持ちなら、大切に保管しないとね。後で金庫に入れましょう」

中身は見ていなかったものの、巾着の膨らみから、おおよその内容は推測できた。

腕輪。

一橋太夫人が名家の出身であることは、白石思曼も自家の祖母から聞いていた。

腕輪のような家宝を若い世代に贈る意味について、白石思曼はもちろん理解していた。

ただ、一橋太夫人が月瑠の実父が不明という事実を気にしていないことは意外だった。

傍らの伊藤のぞみは月瑠の冷淡な態度に腹を立てていたが、考え直してみれば、月瑠は幼い頃から親なし子で、躾けられていないのだと思った。

白石家に嫁いでからは、姑として彼女を教育できる。