第405章 身分を象徴する品

灯りが火紋のペンダントに当たり、鈴木月瑠は目をこすりながら言った。「このペンダントの中に、日月星辰や千山万水が見えるような気がする」

「私の見間違いかしら?」と彼女は呟いた。

その言葉を聞いて、一橋貴明の瞳は一層深みを増した。

このペンダントは一般人にとっては、ただの装飾品に過ぎない。

しかしある人々にとって、これは身分を象徴する品なのだ。

中の景色が見えるということは、鈴木月瑠がその場所と縁があるということ。

あるいは、鈴木月瑠がその場所の人間なのかもしれない。

しかし、そんなことがあり得るだろうか……

「付けてあげよう」

一橋貴明は鈴木月瑠の手からペンダントを取り、彼女の髪を掻き分けて、優しく首に掛けてやった。

少女の肌は白く繊細で、最初は僅かに赤みを帯びていたペンダントが、次第に血のように真っ赤に変化していった。

その上に描かれた山川河流、星辰日月が一瞬にして現れ、ペンダント全体が輝きを放った。

しかし鈴木月瑠は下を向いておらず、ペンダントの変化に気付かなかった。

一橋貴明は深い眼差しを向けながら、口元を緩めて「とても綺麗だよ」と言った。

「そう?」

鈴木月瑠が下を向いてペンダントを見た時、指先で触れると熱く感じた。

携帯の画面を照らして見てみると、ペンダントの色が変わっていることに気付いた。「あれ?どうして赤くなったの?」

「このペンダントは肌の温度に触れると、そうなるんだ」一橋貴明は彼女の髪を撫でながら、艶やかで妖艶な笑みを浮かべた。

「そう」

鈴木月瑠は何か違和感を覚えたが、それが何なのかはっきりとは分からなかった。

彼女がペンダントに触れていると、あくびが出た。

一橋貴明は携帯を取り出して時間を確認し、「少し休んでから帰る?」と尋ねた。

「そうね」鈴木月瑠は頷いた。

ちょうど階段を上ろうとした時、見知らぬ番号から電話がかかってきた。「鈴木月瑠さん、老先生が急に足が痛むと言っています。見に来ていただけませんか?」

「足が痛む?」

鈴木月瑠は眉を寄せながら言った。「分かりました、すぐに行きます」

電話を切った後、鈴木月瑠は一橋貴明を見て言った。「遠藤おじさんが足が痛いって。見に行ってきます」

「送っていくよ」

一橋貴明は脇に置いてあった車のキーを取り、鈴木月瑠の手を取って外に出た。

……