漢方の鍼灸は不思議なものだが、遠藤音美は鈴木月瑠の腕を信じていなかった。
結局のところ、鈴木月瑠は手術メスを扱う医者なのに、どうして鍼灸までできるというのだろう!
彼女は、鈴木月瑠がどうやって叔父を説得して治療に同意させたのか、そして、どのように叔父の病気を治療するのか、見てみたかった。
遠藤音美はそう考えながら、遠藤彦の寝室へと急いで向かった。
しかし寝室の入り口に着くと、中から「ドン」という音が聞こえた。まるで人が床に倒れたような音だった。
遠藤彦は顔色を変え、ノックする余裕もなくドアを開けた。
遠藤音美がドアを開けると、遠藤彦が床に倒れているのが見えた。両足を縮こまらせ、苦痛の表情を浮かべながら、どこか...興奮しているようにも見えた?
「叔父さん、どうして倒れてしまったんですか?」遠藤音美は急いで遠藤彦を助け起こした。
遠藤彦は真っ青な顔で、苦痛と興奮が入り混じった表情を浮かべ、脇に落ちた携帯電話を取ろうとしながら言った。「早く...兄さんに電話して帰ってきてもらって。」
「はいはい、叔父さん焦らないで、今すぐ兄さんに電話します。」遠藤音美は遠藤彦を車椅子に座らせ、身を屈めて携帯電話を拾い上げた。
そして、ウェットティッシュを取って遠藤彦の汗を拭いた。
しかし遠藤彦の苦痛の表情は和らぐ気配がなく、遠藤音美は心配そうに尋ねた。「叔父さん、どこか具合が悪いんですか?」
遠藤彦は両手で太ももを押さえ、痛みで指が食い込むほど強く掴みながら、弱々しく言った。「足が...足がとても痛い。」
「足が痛い?」
遠藤音美は急いで彼の足を見たが、特に異常は見当たらなかった。
しかしすぐに鈴木月瑠が来ていたこと、叔父に鍼灸をしたことを思い出し、表情が暗くなった。
「月、月瑠に電話を。」遠藤彦は震える手で携帯電話を取ろうとしたが、足の痛みで手が縮こまってしまった。
彼は両手で太ももを強く掴み、死に物狂いで掴んでいた。そうすることで、少しでも痛みを和らげられるかのように。
痛みのあまり、呼吸までもが遅くなっていった。
遠藤彦は携帯電話を取る力さえなくなり、遠藤音美に数字を告げるしかなかった。「133****0929、これが月瑠の電話番号だ。」