「彼が私を解放するはずがないことは分かっている」
鈴木月瑠は椅子に寄りかかり、少し目を細めながらゆっくりと言った。「いつか戻るとすれば、それは全ての清算をするためだ」
池田滝「……」
月瑠姉の言葉の意味は、一人でデルタ全体と戦うつもりということか?
「一つ聞きたいことがある」
鈴木月瑠は意味深な笑みを浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。「5年前、デルタの物理研究所は、各国に新型放射性物質を提供したのではないか?」
池田滝は少し戸惑った。「天然の放射性物質?」
鈴木月瑠はうなずいた。「その物質は日本に送られた。他の国々にも配布されたが、理化学研究所だけが研究中に事故を起こした」
「その結果、20人の研究者が亡くなった」
「あなたのお祖父さんは数年前に退職したばかりだけど、この件について聞いたことはある?」