第420章 身不由己

そのとき、鈴木静海の携帯が振動し始めた。彼は着信番号を見たが、出る気はなかった。

電話を切ろうとした時、白い手が突然伸びてきて、彼の手から携帯を取った。

鈴木月瑠が彼の代わりに電話に出た。鈴木静海は一瞬驚いたが、止めはしなかった。

彼女は冷ややかな目で鈴木静海を見つめた。スピーカーフォンにはしていなかったが、周りが静かすぎて、二人とも相手の声がはっきりと聞こえた。

双葉裕子のアルコールに染まった妖艶な声が受話器から聞こえてきた。特に色っぽく:「鈴木さん、中村楽のどこがいいの?」

「こんな遅くに帰る必要なんてないでしょう?ここで私と寝ませんか?刺激的な体験をさせてあげますよ」

彼女は一人で話し続け、大胆な言葉を投げかけ、妖艶な笑い声を響かせた。

鈴木月瑠は想像力が豊かな方ではなかったが、双葉裕子の声を聞いているだけで、その妖艶な姿が頭に浮かんだ。