第429章 良き嫁を失った

一橋貴明は優しい眼差しで鈴木月瑠を見つめ、この小娘の様子を見ると、遠藤音美を弄ぼうとしているのが分かった。

遠藤音美は終始局面に注目し、形勢が明らかになるのを見て、頭の中の緊張した糸が一気に緩んだ。

彼女は笑いながら、黒石を一つ打った。

碁盤の大半は黒石で、白石はわずかしかなかった。

遠藤音美は眉を上げ、挑発するように鈴木月瑠を見つめ、得意げな様子だった。

鈴木月瑠がおばあさんに勝ったとき、彼女は本当に強いのかと思ったが、結局おばあさんが手加減していただけだったのだ。

彼女はおばあさんに、自分こそが一橋貴明にふさわしい人間だと見せつけたかった！

遠藤音美は天の寵児、辞書には「負け」という文字など載っていない！

まして鈴木月瑠に負けるなんて、それは死ぬよりも残酷なこと。だから、絶対に鈴木月瑠に勝たなければならない！