中村少華は松本旻を一瞥した。「お前、姉貴とそんなに親しいのか?」
「一緒に育ったんだぞ、親しくないわけないだろう?」松本旻は白目を向け、中村少華と話す気が全くなかった。
ちょうど中村楽と池田滝が近くにいて、こちらに来るのに数分もかからなかった。
二人が五十メートル先から、鈴木月瑠たちが焼き肉を食べているのを見かけ、中村少華たちもいた……
中村楽は足を止め、呆然と池田滝を見た。「どういうこと?他の人がいるなんて聞いてないよ」
池田滝は彼女を横目で見た。「こんな遅くに一人で焼き肉を食べに来るわけないだろう?」
「でもこんなに大勢いるなんて」中村楽は眉をひそめ、突然行く気が失せた。
池田滝は研究チームに加わったばかりで、かなり疲れていて、リラックスしたかった。「まあいいじゃないか、せっかく来たんだし、行こう。ただ飯にありつけるよ」
中村楽は「うん」と答えた。
二人は自分を納得させ、歩み寄った。
「楽姉が来たわ」鳳紅裳は王者栄耀をプレイしながら、目の端で池田滝と中村楽が近づいてくるのを見た。
中村楽と池田滝は座ったが、話すことがなかった。
鈴木月瑠はいつものように、数人を見渡して言った。「二人とも何か食べたい物ある?遠慮しないで」
「ああ」池田滝はメニューを手に取り、たくさん注文した。
中村楽は路傍の屋台を見て、口角を引きつらせた。
あの時ミイロバーで、月瑠が豪快に一橋貴明と真龍の寶玉を争っていたのに、今は路傍の屋台で食事することになるなんて。
中村楽は一橋貴明に顎をしゃくって言った。「一橋家は破産したの?」
一橋貴明は中村楽を見ずに、鈴木月瑠の繊細な横顔を見つめた。「月瑠が好きなんだ」
中村楽は「……」
鈴木月瑠は「……」
中村楽は一橋貴明たちに遠慮せず、まずビールを二杯注文し、それからエビや海鮮もたくさん注文した。
どうせ彼らが食べきれなければ、月瑠は来る者拒まずだから。
その子は頭を使って稼ぐのが得意だった。
鈴木月瑠はビールを開け、飲もうとしたが、一橋貴明に止められた。
何も言う前に、鈴木月瑠が先に笑って言った。「今日は気分がいいから、飲みたいの」
一橋貴明は無奈く「……」
彼は鈴木月瑠の手首を離し、笑って言った。「いいよ、飲みなよ」