第432章 当事者は気付かない

鈴木月瑠は真っ黒な画面の携帯を見つめ、口角が引きつった。

一橋貴明は携帯の画面が消える前に、一瞥して、意外にも連絡先に「林煙未先輩」と書かれているのを見た。

彼は突然、無言で唇を曲げて笑い、目の奥に深い笑みを浮かべ、鳳凰のような瞳が艶やかに輝き、妖艶な雰囲気が一気に漂った。

とても魅惑的だった。

この小娘、裏の顔が多いな……

国際的に一流の目利きの達人である林煙未には、たった一人の後輩がいる——忘優だ。

忘優は林煙未と並び称される目利きの達人で、性別不明の謎めいた存在だ。

噂によると、この人物は一目で骨董品の由来を見抜くことができ、その目は高性能な精密機器に匹敵するという。

しかし、先ほどの月瑠と林煙未の会話を聞くと……林煙未はもしかして盗掘者なのか?

中村楽は目を細めて「林煙未は何て言ってたの?」と尋ねた。