第515章 生みの親は不明

鈴木月瑠が病室を出ると、橋下香里が一橋貴明と話をしているのが見えた。

一橋貴明は背が高く、長年の高い地位のせいか、オーラが強かったが、橋下香里の前では常に控えめだった。

彼は礼儀正しく立ち、頭を下げて、真剣に橋下香里の話を聞いていた。

その様子を見て、鈴木月瑠は近づかず、壁に寄りかかって片足を曲げ、腕を組んで、悠然とその光景を眺めていた。

しばらくして、橋下香里が横を向いて、やっと鈴木月瑠が立っているのに気付き、笑って声をかけた。「月瑠ちゃん。」

一橋貴明が顔を上げて見た。

鈴木月瑠はキャンディーの包み紙をゴミ箱に捨て、ゆっくりと歩み寄った。その姿は怠惰そのものだった。

一橋貴明は自然な動作で、鈴木月瑠の手を握った。「終わった?」

鈴木月瑠はゆっくりと「うん」と答えた。