第497章 お爺様の偏愛

中村少華は松本旻を見向きもせず、一橋貴明を見て言った。「七兄さん、北ヨーロッパの件はどうなりましたか?」

一橋貴明はソファの肘掛けに腕を置き、淡々と言った。「今連絡が入ったところだ。我々の者が到着したとたん、北ヨーロッパの本部が火事になった。」

「えっ?」

松本旻は口角を引きつらせて言った。「誰だよ?こんなに早いなんて、生まれ変わりでもしたのか?」

その言葉を聞いて、池田滝に抜糸をしてもらっていた鈴木月瑠は、ゆっくりと顔を上げ、目を細めて、背筋が凍るような冷たい眼差しを向けた。

「私の欲しかったものは無くなったの?」鈴木月瑠は一橋貴明に尋ねた。その声には、骨の髄まで染み込んだ殺気が滲み出ていた。

一橋貴明は頷いた。

池田滝はそれほど気にせず、鈴木月瑠の手のガーゼを外し始めた。