冷淡な態度を示す斎藤閔に対して、遠藤紳史は内心不快だったが、頼み事をするには頭を下げなければならなかった。
我慢して、彼は丁寧に切り出した。「斎藤教授、実は娘が顔を怪我してしまいまして、病院の軟膏はステロイドが含まれているので、傷跡が残るのが心配なんです。」
「研究センターで新しい傷跡消しクリームが出たと聞きましたが、システムの不具合で注文できないようです。」
「それで、斎藤教授にご相談させていただきました。」
ふん!
当然注文できるはずがない!
池田滝は遠藤音美が研究センターに連絡してくると予想し、システムに細工をして遠藤家のネットワークからクリームを購入できないようにしていた。
ついでに、遠藤家全員のアカウントをブラックリストに入れ、研究センターの他の商品も購入できないようにしていた。
斎藤閔はゆっくりと答えた。「研究センターの内部ネットワークに問題が発生して、注文ができない状況です。」
それを聞いて、遠藤紳史の表情が少し和らぎ、鋭い目が光った。「斎藤教授、クリームを2本ほど分けていただくことは可能でしょうか?」
「それですね……」
斎藤閔は回転椅子に座り、足を組んで笑みを浮かべた。「先日、院長が手を怪我して、数本製造したんです。」
「各病院が欲しがっているんですが、まだ出荷を控えています。」
「本来なら1人1本までなんですが、今はネットワークが落ちていて、いつ復旧するか分からない状況です。」
遠藤紳史は相手の意図を理解した。「分かりました。定価の2倍でお支払いしますが、いかがでしょうか……」
斎藤閔は淡々と言った。「2倍ですか……青い花に寄生する幽蘭は1億からですから、2本となると……」
彼は言葉を続けなかったが、遠藤紳史には意味が分かった。
要するに、ケチだと言われているのだ!
遠藤紳史は心の中で怒りを抑えながら、表面上は穏やかに言った。「では、2億で2本購入させていただきます。」
斎藤閔は物憂げな声で言った。「遠藤さん、ビジネスはそういうものではありません。幽蘭は1本1億で、他の薬草代も含まれていませんし、諸経費もあります。」
「人件費を除いても、このクリームは1本5億が相場です。」
5億でクリーム1本を買うなんて、遠藤紳史が本当に買えば、完全な損失だ!