「そう言われても」と栗本放治は手を振って「必要ありません」
一橋貴明は彼を見つめたが、何も言わなかった。
竹内北は眉をひそめ、不思議そうに栗本放治に尋ねた。「栗本様は本当にあの件について、気にしていないのですか?」
「どうして気にしないことがありますか?」
栗本放治は目を細め、気にしない様子で言った。「まだその時ではないだけです」
一橋貴明は突然口を挟んだ。「確か何か国際大会があるんじゃないですか?デルタと国際組織が主催するやつ」
栗本放治は一橋貴明を見つめ、一橋貴明も彼を見返した。二人は視線を交わし、笑みを浮かべた。
暗黙の了解があった。
この大会は、国際生理科学連合(国際組織)とデルタが共同で主催するものだった。
業界で最も権威のある大会と言っても過言ではない。