鈴木月瑠は近づいてくる遠藤音美を見つめ、その瞳は漆黒の光を宿し、凍てつくように冷たかった。
遠藤音美は鈴木月瑠のその表情を見て、目の奥に一瞬の喜びが走り、口角を上げた。「私は1000万で黒鳥シリーズを借りたいと申し出ましたが、静墨さんに断られました。」
「静墨さんは特に魅影シリーズのコレクションを大切にしていて、おそらくオリジナルデザイナーのFさま以外は着ることができないでしょう。」
その言葉が落ちると、周囲で再び議論の声が上がった。
高貴な身分の遠藤音美さんでさえ、黒鳥シリーズを借りることができないのだ。
まして魅影シリーズを借りることなど、誰にもできないはず!
だから、鈴木月瑠が着ているこのドレスは、きっと偽物なのだろう?
先ほど安田家のご家族の鈴木月瑠に対する態度を見て、皆は偽物説を半信半疑に思っていたが、今となっては完全に確信に変わっていた。