第583話 私に土下座して謝れ

鈴木月瑠は近づいてくる遠藤音美を見つめ、その瞳は漆黒の光を宿し、凍てつくように冷たかった。

遠藤音美は鈴木月瑠のその表情を見て、目の奥に一瞬の喜びが走り、口角を上げた。「私は1000万で黒鳥シリーズを借りたいと申し出ましたが、静墨さんに断られました。」

「静墨さんは特に魅影シリーズのコレクションを大切にしていて、おそらくオリジナルデザイナーのFさま以外は着ることができないでしょう。」

その言葉が落ちると、周囲で再び議論の声が上がった。

高貴な身分の遠藤音美さんでさえ、黒鳥シリーズを借りることができないのだ。

まして魅影シリーズを借りることなど、誰にもできないはず!

だから、鈴木月瑠が着ているこのドレスは、きっと偽物なのだろう?

先ほど安田家のご家族の鈴木月瑠に対する態度を見て、皆は偽物説を半信半疑に思っていたが、今となっては完全に確信に変わっていた。

「ふん、遠藤お嬢様でさえ借りられないドレスを、あなたが遠藤お嬢様より高貴な身分だとでも言うの?このドレスを借りられるなんて?」

遠藤音美までもが直接鈴木月瑠の偽物着用を非難したことで、二山晴香はさらに傲慢になった。

遠藤音美は唇を歪め、挑発的な目で鈴木月瑠を見つめ、静かに笑った。

彼女は外のゲスト名簿を確認済みで、静墨の名前はなかった。

静墨本人が来て証明でもしない限り、鈴木月瑠は完全に追い詰められるはず!

鈴木月瑠は椅子に座り、その美しい眉目は艶やかで、オーラは特に強く、傲然としていた。

彼女は話しかけてきた二山晴香を見上げ、その眉目には隠しきれない鋭さが宿り、声は軽く緩やかだった。「魅影シリーズは確かに貸し出しはしません。」

「でも、オリジナルデザイナーが着たいと思えば、あなたたちが口を出せる立場なの?」

この言葉に、その場にいた全員が一瞬凍りついた。

この意味は……

もしかして鈴木月瑠が三木清の裏のボスFさまなの?

そんなはずない!

この前Fさまが審査員を務めた時、あの方はQueenと……

待って!

あの時Fさま自身がメディアの前でQueenは姉妹だと言っていて、その後、Queenの正体が明らかになった。

Queenは中村楽だった!

中村楽と鈴木月瑠の仲の良さは、業界でも噂になっていた。

もしかして、鈴木月瑠が本当にFさま?