池田滝と鈴木月瑠は急いで中に入り、中村楽の診察を始めた。
「これは……」池田滝は診察を終えると、呆然として、目には信じられない色が浮かんでいた。
「一体どうなっているんだ?話せ!」
鈴木静海は怒りを抑えながら口を開き、目には冷たい色が宿っていた。
みんながいなければ、おそらく池田滝の襟首を掴んで、状況を問い詰めていただろう。
池田滝は鈴木静海のその表情を見て、口に出かかった言葉を飲み込んだ。
彼は、本当のことを言えば鈴木静海に殺されるだろうと確信していた。
鈴木月瑠は中村楽に数本の針を打ち、心脈を安定させてから振り向いた。
彼女はイライラして煙草が吸いたかったが、我慢して、二秒の沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。「毒に当たっています。」
「何だって?」
鈴木静海の顔色が急変し、その場に立ち尽くしたまま、まるで千年解けない氷のように硬直していた。
彼は体の横で指を丸め、信じられない様子で声を荒げた。「毒だって?どうして毒に当たるんだ?どんな毒だ?」
「毒なんてあり得ないだろう?誰が毒を盛れるんだ?」小池紀之も信じられない様子だった。
彼は中村楽たちについて行かなかったが、玄武たちの説明では、両者は戦闘していなかったはずだ。どうして気付かないうちに毒を盛られたのか?
池田滝は黙ったまま、顎を引き締め、表情は良くなかった。
鈴木月瑠は目を上げ、目の下は赤く、霜のように冷たかった。「彼女の血液成分から、相思子と天仙子の毒だけを検出しました。他は、まだ分かりません。」
その言葉を聞いて、鈴木静海の表情はさらに険しくなり、診察室に置かれた金属の椅子の合金の背もたれを、握りつぶすほど変形させていた。
「相思子と天仙子ってどんな毒なんだ?」小池紀之は緊張した声で尋ねた。
「この二つはどちらも猛毒です。」
池田滝は表情を引き締め、冷たく重い声で言った。「相思子は全身が腐敗して死に至らせる、非人道的な毒薬です。」
「そして天仙子は人を意識朦朧とさせ、眠気を催させます。この毒にかかると、最初は不安定になり、突然痙攣して意識を失います。」
その言葉が終わるや否や。
鈴木静海の手の下にあった金属の椅子の背もたれが、バキッと折れ、掌から血が滴り落ちた。
一同「……」
「解毒できるのか?」