一橋大御爺さんは安田家に挨拶を済ませると、鈴木月瑠の方を向いて、にこやかに言った。「月瑠ちゃん、おじいちゃんとおばあちゃんのところに来なさい」
鈴木月瑠は歩み寄り、素直に「おじいちゃん」と呼びかけた。
「いい孫嫁だ」
一橋大御爺さんは鈴木月瑠の頭を撫でながら、笑顔で言った。「お前は、おじいちゃんとおばあちゃんが気に入った孫嫁だ。何があっても、一橋家がお前の後ろ盾になる」
鈴木月瑠は頷いた。
一橋太夫人は鈴木太夫人の方を見て、目を細めて笑いながら言った。「お姉様、これからは親戚同士ですね」
「あなたの家にも、私の可愛い孫を嫌う人がいるようですけどね」鈴木太夫人は遠慮なく言い、鼻を鳴らした。
一橋太夫人は穏やかな口調ながら、威圧感のある言葉を発した。「一橋家では、まだ彼らが物事を決める立場にはありません」
後ろにいた一橋家の若い世代は、顔を引きつらせ、何も言えなかった。
続いて、一橋太夫人は遠藤彦と話を始めた。
遠藤おもみと遠藤音美は顔を青ざめさせた。
先ほど、一橋家の二人は遠藤家の面子を全く立てず、公衆の面前で遠藤音美の顔に泥を塗った。
遠藤音美はその場に立ち尽くし、身体は硬直し、恥辱が押し寄せ、耐え難い思いだった。
遠藤紳史夫妻も表情は良くなく、穴があったら入りたい様子だった。
そして曽我南麗は驚きを隠せなかった。
鈴木月瑠は私生児だと聞いていたのに、どうして突然、遠藤彦の娘になったのか?
軽蔑的な視線が、まるでナイフのように遠藤音美の肌を切り刻んでいた。
「なるほど、遠藤音美がずっと鈴木月瑠を敵視していたのは、こういうことだったのね。結局、彼女は夢見がちだっただけってことね!」
「私は鈴木月瑠はいい人だと思うけど、大橋伊華はなぜ彼女を嫌うのかしら?」
「それはね、鈴木月瑠の母親は国際的な理香で、当時の帝都の多くの男性が彼女に夢中だったのよ。一橋家のあの方も、分かるでしょう」
「私に言わせれば、遠藤音美は鈴木月瑠に及ばないわ。見た目も鈴木月瑠ほど綺麗じゃないし、頭の良さも劣るわ」
「遠藤音美は本当に見栄っ張りね。一橋太夫人が適当に褒めただけで、もう内定の孫嫁になったつもりなの?」
「彼女の顔はもう腫れ上がってるわ。私が彼女なら、もう生きていけないわ」
「……」