しかし鈴木月瑠は道がわからず、一橋貴明に連れられて行くしかなかった。何度も道を間違え、一橋貴明に首筋の皮を掴まれて引き戻された。
少女は濃い色の半袖を着ていて、それが肌の白さを際立たせ、血管まではっきりと見えた。
一橋貴明の瞳の奥がさらに深くなり、欲望を抑えながら「どこを見てるんだ?」
鈴木月瑠「……」
無意識に一橋貴明のそこを見てしまい、すぐに目を逸らし、指先を強く握りしめた。
「俺を無視するのか」
一橋貴明は少女の震える睫毛を見て、目に笑みを浮かべながら、声を引き延ばして「さっき見てた場所が気に入ったのか?」
鈴木月瑠は彼を一瞥し、目を伏せて「変なこと言わないで、何も見てないわ」
一橋貴明の瞳が深まり、意味深な笑みを浮かべた「どこだとは言ってないのに、どうして分かったんだ」
鈴木月瑠の睫毛が震えた「……」
一橋貴明は鈴木月瑠を腕の中に引き寄せ、声を落として、魅惑的な声で「少女は俺が何を言ってるか分かってるのか?」
彼は鈴木月瑠に近づき、話しかける時、薄い唇が彼女の耳をかすめた。
鈴木月瑠は彼の吐息を感じ、耳元がくすぐったくなった。
一橋貴明は彼女を階段に連れて行き、上る時に軽く彼女の耳たぶにキスをして「ちゃんと話してくれないか、何を考えてたのか?」
「!!!」
鈴木月瑠は眉間にしわを寄せ、一橋貴明を押しのけようとしたが、動かなかった。
一橋貴明はより悪戯っぽく笑って「俺がこうするの嫌いか?」
鈴木月瑠「……」
彼女は顔を上げて一橋貴明を睨み、冷たい口調で「まだ大御爺さんの治療が必要なんでしょう?」
「何を急ぐんだ、もうすぐ着くよ」一橋貴明は笑い、胸が震えるほど、魅力的な声で言った。
鈴木月瑠は冷淡な表情で、彼について長い廊下を曲がりながら、冷たい声で「あのじいさまたちの一年の診療費は、いくら?」
「一人五百万円だ、そう多くない」一橋貴明は正直に答えた。
國醫級の存在として、年間五百万円はすでにかなり少ない額だった。
一橋大御爺さんは功労者の一人で、戦功が輝かしく、国に貢献した人物だ。
あの人たちは皆研究者で、大御爺さんを尊敬していたため、自ら五百万円だけでいいと申し出た。
鈴木月瑠はゆっくりと目を細めて「それじゃあ損してるわね」
年間五百万円で、何人もの専門家がいるということは、年間数千万円になる。